August 2017

August 31, 2017

the dissatisfaction '17


例えば駅構内で「スマートフォン」を左手に持ち下を向いたままのヤツが俺を目掛けて歩いてくる。
ヤツが顔を上げた時には俺はもう目前、勝手に驚いた顔をした後、また下を向いて通り過ぎて行く。

その「勝手に驚いた顔」にツバでも吐いて、間髪入れず背負い投げでもカマしたい衝動。

同じく駅構内で「文庫本」を左手に持ち下を向いたままのヤツが俺を目掛けて歩いてくる。
俺はその没頭しているであろう本の続きを邪魔しない様にサッと避けて差し上げる。
もし俺に気付き「驚いた顔」をしていたなら、「驚かせてしまいましたね」なんて気の利いた言葉の一つさえ添えたくもなる。

行為は同じなのに、この気持ちの違いはなんだろうか。ずっと思い続けている。

とにかくええ加減、あの機器から「スマート」って文字を抜いていただけないかな。本物の「スマート」に失礼だから。


ところで俺だってそんな機器を持っている。時には使いこなしもする。最新デジタルの飽くなき探究心に驚きを隠せない時だってある。

それにしても一から百まであんな機器に頼りまくって、「君って結局何一つ生み出してないね?」って類いによく出くわす。

会話をしながら触り、分からない単語が出れば触り、エトセトラ。まるで永遠の相棒の様な扱い方で。 

例えば甲子園中継を見ていても頻繁に目に入っただろう?今大会一のバッターがピッチャーと向き合っているそのナマの場でずっとカメラを構えているって類いが。

コンサート会場でも同じ光景によく出くわす。世界のギターヒーローが観客に響かせているそのナマの音の前で。

「いいじゃん別に!」などと怒り狂うヤツもいるだろう。そして俺は哀しくなる。

たまに腕時計をはめ忘れて外に出てしまう事がある。時間を確かめようと何度も左腕に目をやり、そこで気付く、今日ははめてなかったんだって事に。

15回もそんな行為を繰り返し、苦笑いを続けている。

ほら、その例の機器で時間を確かめればだって?そんなの「スマート」じゃないよ。

「ワケ分かんない〜!ふぃ〜超ウケる〜」じゃねぇ!×7964。

先日、待ちに待ったジムジャームッシュの「パターソン」を観た。裏切らない男ジャームッシュ。独自のセンスを涼しい顔で成すジャームッシュ。

前回、ユニフォームの事を書いたが、俺は別にユニフォーム自体が嫌いなワケじゃない。
信頼も築いてないのに勝手にチームを形成しようとするその浅はかさな思考が許せないだけだ。

ジャームッシュのチームワーク、「スマート」とはあの事を云うんだろう。

そんな男の最新インタビューより最後に一つ、

「僕が大嫌いなのは通りで皆が歩きながらスマートフォンを見ている風景。ぞっとするよ。まるで歩くゾンビだ」。

ええ加減、あの機器から「スマート」って文字を抜いてくれんかな。

敬具。

 


drecom_eroom5session at 08:06|PermalinkComments(0)│ │散文 

August 22, 2017

the AT's too much '17


unnamed


相も変わらずテレビ画面に向けてあーとかうーとかおーとか叫び散らしている。その声のデカさにまずは自らが驚くほどだ。

32インチのテレビは基本的に甲子園とダウンタウンを観れる様にする為だけに手に入れた。録画機能だって搭載してある。文明の利器だ。いまやヴィデオテープさえ要らない仕様だ。

熱闘甲子園を観て、ダウンタウンを観て、身体はそろそろ休ませてくれと云っているのに、一度火が点いたなら休み方すら忘れて精神は発狂する。

スタンドで見守るお爺ちゃんの一喜一憂、その姿だけで涙腺は故障だ。

さて、相も変わらずの喜怒哀楽吹出物野郎このワタシ、そんなテレビに以前から録画してあったボブディランがノーべル文学賞を穫った際に放送されたNHK番組を凝視している。

その画面には曲毎に詩が字幕付で出る。歌詞カードを読むのも良いが、表情と詩と曲がダイレクトに伝わるってのが更にイカす。

22歳くらいの時に観たスペシャルズの「ルーディ・ア・メッセージ・トゥ・ユー」のヴィデオがまさにそれだった。

あの曲はスペシャルズのオリジナルではないと後で分かったが、そんな事さえ飛び越えてダイレクトに胸中に響いてきた。あの黒白のワルそうな連中が不良に向けてこんなメッセージを送っているって部分に痺れた。レヴェルミュージック。

バンドに拘らず、一人でこれを演ってやろうと思った一番のキッカケだった。レヴェルミュージック。

ところでボブディランの番組、一曲毎に繰り出される言葉が強烈過ぎて、良い意味で疲労して一向に最後まで進めない。

昨日は「ハリケーン」って曲を久方振りに字幕付で聴いた。その一曲だけで力は尽きた。この曲についてこちとら風情が偉そうに説明する気は毛頭ないが、チャンピオンになれた筈のボクサーが、黒人であったが故に知らん間に罪を着せられ、知らん間に殺人犯にまでされてしまった無実の男の実話物語だ。

まずこの曲が7インチカットされるって事自体が驚きだが、曲が長過ぎるが故にA面B面に分けてでもその物語を伝えたいと、その信念を貫いた心意気に脱帽する。

A面はフェイドアウト処理され、B面はフェイドイン処理から幕を開ける。それがボブディランの意志だろうが、たとえレコード会社側の意思だろうがって事さえ突き抜けて響いてくる。

面倒臭い事だって思うだろ?でもこの信念こそがロマンだと思っている。

何年か前、文句を散々と垂れ流しながらも結構長い事働いていた場所があった。そこには100人以上が働いていて、ほとんどは意思疎通も出来そうにない連中だったが、分かり合える人間もそれはそれで沢山居てくれた。

ある日、その場に出向くと突然、蛍光ピンク色のユニフォームを支給された。今までフリースタイルが売りだったのが、会社側のスローガンとしては「ここらで一致団結して更なる絆を築きましょう!」って訳だ。

100人以上が文句も云わず黙って蛍光ピンクを着ていた。俺みたいな不適合者には到底出来ない芸当で、その光景にはただただ寒気がした。

そんな「絆」ほどヤスいモノなどないと常日頃から思っている性分であるが故、俺はわざとその蛍光ピンク色のユニフォームを羽織ってその場を仕切っている奴の元へ出向いた。奴は俺と阿吽の呼吸で意思疎通出来る元バンドマンの男だった。

「おい貴様、俺が何しに来たか分かるか?」、奴とはいつもこんな口調でやり合っていた。

奴は云った、「絶対に貴様が文句をヌカしに来るのは分かっていた」、

そして続けた、「俺だって出来ればこんなモノは着たくない。貴様が文句を云う理由は分かる。でも俺にもこの流れは止められん。俺より更に上からの指示だ。俺には家族を守る義務がある、だから従う」。

奴の云いたい事も痛いほど分かった。否定する権利もない。そして奴とは今も唯一無二の友達だ。

でもその場で俺が辞めると云い出す事までは奴にしても想定外だった。俺はその日限りでその場を去った。

去る前、仲の良かった奴等に一人一人挨拶して回った、

「俺は辞める。理由は分かるよな。お前等、コレ着て明日からもこんなクダラナイ絆に付き合うつもりか?俺は一番に抜けるで」。

意外な事にどうしようもない俺みたいなモンの事を止めてくれるモノズキな心優しい奴等も居た、「意外と似合ってるよ」「とりあえず一回座りましょう」、

嬉しかった。

あの時、足りん頭だったとて考えていた事はたったの一つだ。これを一つでも受け入れたなら今後も「まーええか」と何でも受け入れ、気付けば飼い馴らされた犬の仲間入り。それだけは避けよう。蛍光ピンクを笑顔で突き返して清々しくその場を去った。

そんな時、脳内BGMには永遠と小谷美紗子の「真(君の真未来に捧げるうた)」ってナンバーが溢れ続けていた。


そんな君が怒りました
社会と名誉と利益に対して
君は会社を辞めました
絆と人間と己の為に

君は会社を辞めました
仲間と真未来と己の為に
君は皆に身をもって
仕事が何かを示しました


レヴェルミュージック。愛して止まない魂の声。

現実問題として、その後半年間くらいは地獄を見た。収入は極端に減り、資金もない、俺ってひょっとして世に云うヒモ野郎なのかもってところまでいった。

「俺ってまさか、突拍子もない過ちを犯したのか?」とも思ったし、自殺?恥ずかしながらそんな文字さえ頭を過った。

そんな最中、ローリングストーンズが来日した。どうにか工面したマネーで東京ドームの最後列にて踊り回っていた。いつだって音楽って名の教科書があった。

そして今、振り返ってみて感じるのはあの時の判断に間違いはなかったって事だ。ピンチはいつも辛うじて突破して今がある。

面倒臭い事だって思うだろ?でもこの信念こそがロマンだと思っている。

ある時、誰かが突然、俺の事を何ちゃら人格障害者だと云った。聞いた事も見た事もない立派な病名らしかった。

俺はソレを律儀に調べてみた。読み進めながらまんまと飲み込まれてしまいそうになった、

「あーこれは当て嵌まるか。おーなるほど。いやーこれは違うで。で、コレは何?」

それ以上読むのは止めた。まんまと洗脳されてしまいそうだったから。

大概の病気はそんな事から始まると思っている。「やっぱりワタシには立派な病名があったんだわ」ってところから。知らん間に腑に落ちて気付けば処方されたクスリを飲む様になる。

医師は云うだろう、「そもそもの原因はストレスです!」

ストレスなんてタヌキにもナスビにだってあるだろう。

先日、ひょんな事から「鬱病躁病診断」ってヤツにトライしてみた。質問に対し「常に」「時々」「まったく」とかを選択していく仕組みだ。

その結果があまりに戯けていた。「戯けオリンピック」金メダリストの称号も夢じゃない。結果はこうだ、

「貴方は鬱病や躁病ではないでしょう。しかし、その可能性もあるかも知れません!」

なんじゃそりゃ×ジャスト28年分、2万人中2万291人が当て嵌まるってな仕組みだ。医師には病気じゃない連中まで病気にさせてしまう巧みな話術があるって訳だ。

その理論でいくと高校球児もダウンタウンもボブディランも立派な病気だ。ブコウスキーなんてもはや論外だ。自信を持てば病気、自信を失くせば病気。もう病気でいい。

ところで、この文明の利器がこれだけ発達した現代に於いて、いまだに電車に乗った際の最低限エチケットさえ守れない「降りる前に乗り込んでくる阿呆な連中」には怒りを禁じ得ない。

でも奴等に「君達、エチケットって御存知?」などといくら熱弁を振るったとて一ミリも理解などされず、「あー、コイツは病気だ」などと呆れられるだけなんだろう。

云って簡単に理解出来る人種なら、云われる前に行動するだろうから。

長くトゥーマッチな文章になってしまった。云いたい事はただ一つ、火は絶やすべからずだ。

最後に、俺を事ある毎に奮い立たせてくれるブコウスキーの名文句を一つ、

「俺はただ大缶のビール六本パックを次々と飲み干し床に入った。訳が分からなかった。精神分析医の診察を受けた方が良いかも知れない、とまで考えた。診察の様子がありありと浮かぶ様だった。だから俺は自分で分析し、診察代を節約した」。

最敬礼。

 
 

drecom_eroom5session at 11:01|PermalinkComments(0)│ │散文 

August 14, 2017

peace 170814


NewOrleans

 
俺は今、通算三度目のESTA申請をやっとこさやり終えたところ。

一度目は2010年、二度目は近頃、パスポートの有効期限記憶間違いにより14ドルを無駄にした。

ソウルも台湾もその記憶間違いの有効期限のまま渡航した。記憶は間違ったままに完全に脳内にインプットされていた。

記憶を信じ過ぎて、パスポートを見直す事もなかった。自信すらあった。申請後、念の為にとパスポートを見直した時には唖然とし、どうしようもない怒りが込み上げてきた。無論、自分自身に。

米国での入力ミスは許されない。そう踏んで、再申請を出し追加の14ドルを支払った。

ところで、東京は8月に入ってから毎日雨を観測しているという。

実際空は曇り放題、今も多分、雨は降っているだろう。シャラクサ過ぎて外を見る気もしない。

これって相当くだらない事だなと思っている。

2、3年前の年末、さほど仲良しとはいえないが好きな奴が俺に云った、

「来年の目標をこの紙に書いて!」、

俺は思いつくままに「アメリカ再訪!」と書いた。

それから2、3年かかったが、遂にその時期が近付いてきた。

小学校の卒業アルバムに書かされた「将来の夢」の言葉が蘇ってくる、

「ヒットする様な歌手になりたい」。

俺は今、
「ヒットする様な歌手になりたい」とは素直に云えないが、唄い続けたいとは思っている。太るだけ太ってロボットとなり、ただ死んでいくってのだけは真っ平御免だから。

昨年末、あの紙に書いた目標がいまだ成し遂げられていない事実に対しどうしようもない怒りが込み上げてきた。無論、自分自身に。

そして今年1月中には格安航空券を手配した。

頭を空っぽにして甲子園中継に全神経を注ぎ盛大に涙でも流したいが、「頭は渋滞で愛はリタイヤ、心はどこかで故障中」(ASKA) だ。

俺は今、入国審査を果敢に突破し、マンハッタンに辿り着く頃には太陽が燦々と輝いているってのを強く頭に思い描いているところ。

 


drecom_eroom5session at 12:16|PermalinkComments(0)│ │散文 

August 12, 2017

手紙(改訂版)/ 2017



宛先不明の手紙を書いてあの娘の元まで
届けてやるつもりだったのに
ポストマンが云うには「宛先は何処ですか?」
お固い話にはもうウンザリさ

その手紙はいわば自らの為に
書き殴った様な絵空事の戯言
行き先なくして、書き殴った文章は
まんまと自らの胸中に命中したって訳さ

一日が36時間になればいいと願ってるあの娘の為に
俺に出来る事はなんだ?そんなの皆無さ
だからせめて絵葉書でも...

朝が来てそんな感じ、思いつきの夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

窓の外では痴話喧嘩、ようやく集中して精神を
高みに持ち込んだところだっていうのに
シチュエーションはばっちりの土砂降りの中
「もう大嫌い!」、誰もが役者さ

悪いのは男さ、そういう事でいいさ
経験ってのは武器になるさ
どうか彼女を抱き締めて静まらせてやってくれ
そして俺に静寂をプレゼントしてくれ

高みに持ち込んだ筈の精神は簡単に崩れた、
だから雨の音で誤摩化した
シチュエーションはばっちりの豆電球の中
「もう今日は終わり・・・」、誰もが役者さ

朝が来てそんな感じ、救いなき夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

大切な事のほとんどは酒場で決めてきた
そう、酒場と書いて契約と読むさ
大切な事のほとんどは酒場で学んできた
約束は忘れないさ

偽者がいくら気取ってみたところで
中身までは盗めないさ
約束を忘れてしまった奴は信頼を失くした
そして当たり前に友を失くした

悪いのは酒さ、それならそれでいいさ
口に運んだのはお前自身さ
言い訳が言い訳を生み
また新しい嘘が生まれてしまうのさ

朝が来てそんな感じ、馬鹿らしい夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

好きになる人間は気が付けば
イカレているかの様だった
だけどそれは魂に従順ってだけの話だった
キチガイとは褒め言葉だった

彼女は去った、
「もうこれ以上は無理よ、私達は解散するの」
もう一人にはなりたくないとすがりついた男は
焦げ付くほどに哀れだった

再結成はないさ、道は砕けた
砕いたのはお前自身さ
何度目の事かは数えたくもないんだ
イカレたって進むのさ

朝が来てそんな感じ、情けない夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

泣ける場所がないと云って俺の前で泣く
君の事を思っている
誰かの失敗が経験になればいいね
学べる内に学ぶべきさ

死ぬ勇気を持ち合わせているくらいなら
生きる勇気を拾ってこいよ
心の中で生き続ける前に目の前で息してくれ
笑える内に笑うべきさ

捻った蛇口から言葉が溢れ出してくる様だ
鉛筆の先端はいつも震えている
死んでから初めて認められるんだって?
それじゃちょっと遅いのさ

朝が来てそんな感じ、耐え難い夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

小さなお婆ちゃんが新聞を丸めて
その文字を睨んでいる
憎悪の事件にインクだって滲んでる
お婆ちゃんが憂いでいる

御国をあげての戦争をまた始めるつもりですか?
目の前の争いだけで手一杯なのに
何処に行けども良い奴が居て
悪い奴が居るってだけの話なのに

殺したいと思った奴なら居るさ
そう、数えたくもないほどだ
殺したいと思った奴等からも学んださ
御国なんてあげなくとも

朝が来てそんな感じ、抑え切れん夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

女は男に云った、「寝たい時には一緒に寝ましょ!」
嗚呼、無邪気に遂行した
次の日の夜、泣きながら女は友に云った、
「私、なんであんな事をされたのかしら?」

被害者がどっちなのかは知る術もない
だって、二人っきりの夜さ
そしてでっちあげられた嘘の真実だけが
威勢良く転がり出すのさ

何を信じるべきかは永遠に分からない
けど、魂は愛していたい
何処に行けども粋な奴が居て
無粋な奴が居るってそれだけの話なのさ

朝が来てそんな感じ、忘れたい夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

宛先不明の手紙を書いてあの娘の元まで
届くかを賭けてたのに
ポストマンが云うには「宛先は何処ですか?」
お固い話にはもうウンザリさ

その手紙はいわば自らの為に
書き殴った様な絵空事の戯言
行き先なくして、書き殴った文章は
まんまと自らの胸中に命中したって訳さ

正義が正義であればいいと願ってる友の為に
俺に出来る事はなんだ?そんなの皆無さ、
だからせめてそのままでいてくれよ

朝が来てそんな感じ、繰り返す夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

朝が来てそんな感じ、溢れ返る夜だった
朝が来てこんな感じ、ありふれた夜だった

また朝が来た
また朝が来た

 



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August 10, 2017

ニューオリンズ・ビバップ・ポエム / 2012



メンフィスから出る列車は早朝6時45分発
目的地は終着駅ニューオリンズ、ブギウギ胸中
座席を二つ確保してファットガールに目で合図
俺ははるばると東京からやって来たんだよ

トランクに頭を預けてようやく周囲を見渡せば
新しい世界に飛び込んでいる事を自覚する
心配する事は何も無いんだと景色を見渡せば
俺はこの上ない喜びを抑える事が出来なかったよ

車掌が遂に呟いた、「ネクスト・ストップ・イズ・ニューオリンズ」

ニューオリンズに到着したのは15時22分頃
プラットホームに足をつけた瞬間に聴こえてきたのは
誰かが吹いているトランペットのファンファーレ
まるで俺みたいな男の事でさえ歓迎してくれている様だったよ

一目散にその音が聴こえる方へ向かって
バーボンストリートに辿り着いた
ニューオリンズに到着して僅か30分、バーテンダーが目で合図
俺はタンバリンを渡されてバンドと一緒にステージに立っていた

ガムテープの貼られたサックスを裸で抱えた男とすれ違う
歓迎してくれているのはきっとこんな男だ
電信柱に凭れてヤツが自然に吹き出した
俺はこの街を天国って呼ぶ事にしたんだよ

空からシャボン玉降らすヒッピーを眺めながら流し込むガンボ
俺はこの街を天国って呼ぶ事にしたんだよ

メンフィスで手に入れたギターを抱いて大通りに出た
俺はサングラスをかけて
街中で日本語を響かせた
黒人と白人に届く様に
人種差別がなくなります様に

奴等は物珍しそうに眺めていた
恐かったのでサングラスは外さずに
数曲を捧げた
路面電車の乗客に
そしてこの天国に

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メモ帳から突然発見されたポエム。重要なのは興奮を止めない事だ。
ガムテープの貼られたサックスを裸で抱えたあの男にもう一度会いたい。




drecom_eroom5session at 17:40|PermalinkComments(0)│ │ 

August 02, 2017

アクトナチュラリー / 2015



奴等は俺を映画に引っ張り出し
一気にスターに仕立てるつもりだ
主人公は哀しみに暮れる男
そう、俺は俺のまま演じれば良いのさ

約束するよ、あの娘と
主演賞だって狙うつもりだ
この映画でやっとスターになれる
俺に打って付けの役だから

皆にもこの映画を観てもらいたいね
そしたら直ぐに気付くだろう
愚か者だってスターになれる
そう、俺は俺のまま演じれば良いのさ

次は哀しみに暮れる孤独な男が
跪いて憐れみを乞う場面だ
リハーサル無しで見事にやってのけよう
そう、いつもの俺を演じれば良いのさ

約束しよう、あの娘と
オスカーだって奪うつもりだ
この映画でやっとスターになれる
俺に打って付けの役なんだから

皆にもこの映画を観てもらいたいね
そしたら直ぐに分かるだろう
愚か者がスターの階段を上る
そう、いつもの俺を演じてるだけでさ

俺は俺のまま演じれば良いのさ

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原曲はカントリー界のボス、Buck Owens「Act Naturally」。
ビートルズの軽快なカバーで有名です。
詩は原曲の訳詞に基づきながらの意訳です。
ビッグスター!

 



drecom_eroom5session at 09:43|PermalinkComments(0)│ │ 
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