February 28, 2010
職務質問はブギウギの如く
’10.2.24(水)
神聖極まる仕事を終え、
ハッタリ渋谷タウンの喫煙所でヒップな相棒と煙草を三本吸い込みながらの与太話、
握手でもして「よーよー、またね」、
別れを告げてそれぞれの道へ。
こちとらポッケに両の手突っ込み、
トロけた目をしてイカサマチャーミングポマードの香りを風に漂わせながら歩いていた矢先、
警察官三人が突然背後から俺を取り囲み話しかける、
「酷くお疲れの様ですね、ちょっと持ち物を見せてもらえますか?」
おーええ感じやないか、来とるやないか、
思うと同時に激しく胸は躍り出す。
以前の俺なら素通りするか、
東京ドーム三個分、甲子園なら八個分に響き渡る程の金切り声を駆使して
「貴様等が本物の警察官だと一体どこで信頼出来る?」だとか何だとか、
戯けた事をほざいて一悶着二悶着は断じて避けられない胸中。
バットしかし、今は違う、
俺はキュートな笑顔さえ浮かべて答える、
「やぁどうも!」
人混みの中、隅っこ追いやられながら質疑には応答を。
「渋谷はよく来るの?」
「仕事帰りなモンでね」
そこで俺は仕事場のネームカードを取り出し堂々と身分を証明する。
「珍しい名前ですね」
「ハッハッハッ、広島!」
あれやこれや、聞かれもせんのに誇り高き個人情報ひけらかしながら持ち物を見せていく。
ポッケに煙草はあるが残念ながら麻薬はない。
そんなモノはお目にかかった事もない、0.1ミクロンも興味がないからだ。
「ボディチェックも良いですか?」
おーええ感じやないか、キとるやないか、
思うと同時にブギウギの如く胸は躍り続ける。
以前の俺ならハラワタ煮え繰り返り、
「何も出てこんかったら二万円ずつ払えよ!」だとか何だとか、
戯けた事をほざいて右往左往。
バットしかし、今は違う、
俺は律儀に両腕を上にして触りやすい体勢さえ御提供、
そして「煙草一本もらえますか?」と仲間に頼まれる時とまったく同様の塩梅でもって答える、
「はいどうぞ!!」
財布の小銭入れ部分まで覗かれる様をニヤケながら傍観し、
その瞬間を大いに楽しむ余裕さえ感じるハッタリ渋谷タウン、夜の出来事。
何かが出てくる事を期待した警察官トリオには心底申し訳ないが、
財布の中身はなけなしシワクチャの千円札二枚のみ、
残念ながらこちとら犯罪者でも何でもない、ただの夢見がちな男。
最後の最後、解放された俺が再びキュートな笑顔を駆使して告げる、
「どうもお疲れさんでした!」
そんな訳で「胸躍る瞬間ランキング」初登場第二位は「職務質問される時」、
「職務質問されて喜ぶ馬鹿がいるぜ」と誰かが俺を罵るなら、
「貴様は職務質問もされた事ないのか」と俺は勝手な哲学で誰かを罵るだろう。
平凡なんて真っ平御免、
感情と経験は嘘をつけない、俺は真っ直ぐに歩いている。