December 26, 2006

傘泥棒にはなるなよ

降りしきる雨。俺は傘をヤツに貸す。それは優しさとはかけ離れたモノで、俺が帰る時、さも誰も使ってなさそうなボロボロの傘を選び出し、さも自分の物であるかの如く差して帰る魂胆。しかし、傘はない。ボロボロの傘はどこにもない。駅までの道のり、大雨の中全力疾走する男、それ私。俺は傘泥棒にはとてもなれない。なぜなら盗まれた奴に、「大雨の中全力疾走する男」の肩書きを与える事になる。俺がもし盗まれた側の男なら、「ドツキマワシタイ」では物足らず、「ドツキマワス」を連呼し、全力疾走で盗んだ男を追い回す。私は追いかけ回されたくはない。そして追いかけ回されたくなければ、傘泥棒にはなるなよ。部屋に戻ってすぐシャワーを浴びれる幸せ、これを当たり前だと思っちゃいけない。

at 22:05│Comments(0)TrackBack(0)│ │短編 

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