March 16, 2009

全部唄に変えようぜ ’09.3

’09.3.15(日)

いつもより五分早く部屋を出る。俺は稼ぎまくるぜなどと意気込んでみる。駅の階段を上る途中、絶好のタイミングで急行渋谷行き電車がやってくる。激しいクラクションを鳴らして電車が急ブレーキを掛け続ける時、俺の方耳ではヒートウェイヴが希望の唄をがなる。電車は中途半端な位置で止まり、俺は何が起こったのか、早よしたれやの表情で遠くから電車側に何気なく目をやる。

そこで俺は見た、おっさんを。命を落としたおっさんの姿を目の当たりにした。

俺は合掌する事さえ忘れ、どうしようもない哀しみが襲ってくる。

おっさん、死んだら駄目だぜ。鉄道会社、家族、職場はおろか、俺みたいなボンクラの懐事情に至るまで様々な事柄に迷惑は及ぶ。死ぬ事より逃げる事はない。死人に口なし、死んだら駄目だぜ。

待てば電車は何もなかったかの様に走り出すか知らんが、俺はその場で「片付け」が終わるのを呆然と待ち続ける事など断じて出来ず、ましてそんな電車に乗る神経など持ち合わせとる筈もなく、そして二度とこのホームには立ちたくないと感じる。バットしかし、どうぜ俺はまたホームに立ち、電車に乗らざるを得んだろう。世の中は回り続け、俺には生きていく使命がある。

とにかく俺は、長蛇の列に並んで律儀に遅延証明書なるモノをもらえる様な異常な精神の能天気野郎ではなく、改札を飛び越え部屋に舞い戻り、初めて仕事場までロードバイクに跨る。

おっさん、アンタのせいで遅刻はしたが、アンタのおかげで初めて仕事場までロードバイクで向かったぜ。二十分弱で到着する事が判明したぜ。

アンタがしてくれた事はそれ位の事だ。おっさん、死んだら駄目だ。俺はその光景が頭から離せず、何度も両手を重ねて勝手に合掌した。俺に出来る事はこんな事しかない。死んだら駄目だぜ。


仕事を終え部屋に戻ると今度は俺の個人的な事柄に頭をパンクさせたが、俺はとにかくPLEASANT TAPのライヴに出向く、出向くに至る。

様々な感情に押し潰されそうになるが、竜也の兄貴が「お前の為に唄ってやるぜ」の形相で唄いがなる。

無論、今村竜也は今村竜也の為に唄う。バットしかし、俺は都合良くも「俺の為に唄っとるとちゃうんけ」などと捉え、その瞬間、グッと、ググッと迫るモノを感じる。こんな日に観たライヴは有無を言わさず記憶に残る。そして、また必ずこの人達とどでかい企画をやらかし、堂々とした表情で語り合いたい衝動に駆られる。近頃、全くギターを弾いてなかったが、次から次へと立ち向かう必要性を感じる。

その後、香港行きの相棒に書類を手渡し、「この際香港丸ごと買い占めちまおうぜ」などと気取る。

喜怒哀楽を味わい尽くした様な一日。空腹を噛み締め売れ残り弁当を買い占め部屋に戻り、またおっさんの事を思う。死んだら駄目だぜ。布団の中で合掌を繰り返す。

そしてさよならしたアイツの事を思う。深く深く思う。

責めるだけ責めた後、今までとはまるで違う感情が襲ってきて懲りもせず後悔を一つ。辛い思いをしたのは俺だけじゃない、苦しい思いをしたのもアイツの方だ。そして辛い思いをさせたのもそう、俺だ。

ゴチャゴチャグチャグチャ掻き混ぜて俺は眠りに就いた。

「眠たーくなーいけどー眠るしかなーい」

俺の唄だ。

そうか、昨日の出来事、全部唄にしようぜ。そしたらお前、さらに説得力格段に増すんちゃうんけ。俺にはこれしかないぜと意気込んでやりまくれよ。生きるぜ、強引にでも高々と笑って過ごそうぜ。


at 23:52│Comments(0)TrackBack(0)│ │日々 

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