September 30, 2009

コーヒー・ラヴァーズ・グッド・ラック

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まるで思い出したくもない悪夢に苛まれている様だった。

すなわち、朝も早よから身震いする程の怒りの荒波を泳がされていた。

詰まる話、デリカシーの欠片も持ち合わせてない輩の相手をせずに済む程の器など俺にはなかったと気付くに相応しい茶番劇。

そして俺はまたしても真正面から相手にしてしまった。

気分なんてたったの二秒で変わる、それで一日は丸潰れだ。

壁をぶち蹴りたい衝動に激しく駆られていたが、そんな事で大事なブーツの踵を台無しにしてしまうのはさらさら馬鹿らしい事だと思えるだけの心はあった。

何かを投げつけながら、「クールな映画が観たい」などと考えていた。

デリカシーの欠片もない輩にはその八倍デリカシーの欠片もない態度を

温もりのある人間にはその八十倍温もりのある言葉を


こちらを生きるスローガンに掲げて久しい男このワタシ、

何でもかんでも真剣に取り組んだら馬鹿をみるのもこの俺かも知れない。

そして俺はまんまと飲み込まれていた。

息もきれぎれ、偽者イカサマヒッピー野郎と闘い、全てを見失っていた。

与太話はその程度にして踊り方を教えてくれないか
上手に上手に交われる様な踊り方を身に付けたいんだ

真面目な面をしているけれど頭開けりゃ破廉恥な事だらけの
ノータリンに話しかける 吹き溜まりに話しかける

何、こうやって歩幅を合わせるだけで手軽なダンスは簡単に身に付くモンだぜ
ノータリンが笑っている 得意気な馬鹿面ぶらさげて

男はハンカチ取り出して横に振って答えている
駄目だ駄目だ駄目だそれが出来ない 手軽なダンスなら踊る気になれない

踊り方など知りたくもねぇ 独自のダンス踊りたいねー


俺が唄う。手軽なうわべだけの付き合いなど初めから要らない。

悪いのは俺だ、なんたってそうして稼いだお金で松田優作のレコードが聴ける。

悪いのは俺だ、理論仕掛けの説教など聞きたくもない、二粒のチョコレートに愛を。

帰り道、電話口に話しかける女の声を聞いた、

「そういった訳なんだけれども・・・」

「例の如く・・・」


その言葉選び、喋り口調はまさに俺の大好きな類いのモノだった。

気分なんてたったの二秒で変わる、それで勝手にハッピーエンドへと仕立て上げろ。

本屋のウインドウ越しに発見する狂乱のコーヒーブック、俺はウイスキーよりもコーヒーを愛している。

明日が休みで一安心、どうせ俺はまたヘラヘラと全てを笑い飛ばすだろう。

今日の事は思い出したくもない、

まんまと飲み込まれてしまったこの俺に鎮静剤代わりのヒップな会話と二粒のチョコレートを。



at 21:34│Comments(0)TrackBack(0)│ │短編 

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