March 29, 2010
拝啓・ボブディランの精神
’10.3.11(木)~3.29(月)
東京公演開演前、会場には音楽ではなく朗読テープが流されていた。
虚ろ気分だった俺はそれをボンヤリと耳に入れていた。
それはまさか、ジャック・ケルアック「路上」の朗読テープだったという。
毎日、何が飛び出すか想像もつかない程に入れ代わるセットリスト、
原曲が何かさえ分からないアレンジ具合、
例えば日本公演14公演の内、3回のみ演奏された65年作「It's All Over Now, Baby Blue」、
その時、俺は確かにその場に居たが、それが演奏されていた事を知ったのは後日セットリストを見た時だ。
アレンジが凄過ぎたのか、俺の意識が飛んでいたのか、とにかく気付かなかった俺を俺は責めた。
固定されていたアンコール3曲のラスト、「All Along The Watchtower/見張塔からずっと」、
これが東京公演も終盤に差し掛かった頃、突然「Blowin' In The Wind/風に吹かれて」に変更されていた。
要するに「一筋縄ではいかない男」代表格、
俺はこの期間、ボブディランのまったくもって粋な精神に夢中になり、いちいち胸を躍らされていた。
すなわち「アンタの望み通りには演りません」精神、ヒップにしてパンク最高峰、
俺が好きなのは、曲がどうのこうのとヌカす以前に、
あれ程の大物がまだまだ懲りる事無くひけらかすその誇らしき精神だ。
本日日本公演最終日、たった今セットリストを確認すればまた新たな演奏曲が加えられていた、
最初から最後までやりたい放題、俺はもはや手を叩いて喝采するしか手がない。
http://www.sonymusic.co.jp/Music/International/Special/BobDylan/special/index.html
後ろ髪を引かれながらも本日、会場には向かわなかった。
仕事からの帰り際、渋谷駅構内でイヤホンから「My Back Page」が流れてきてリピート、
46年も前に録音されたこの曲を久方振りに聴けば胸が締め付けられてきた。
2010年3月、俺はこの男を2回見た、
思いながら今更、泣きそうになった。
自分が思うその11倍、俺はこの男が好きだったのだ、そして更に愛は深まった次第。
7年以上待ち侘びた甲斐もあったってモンだ、まだまだ行ける、行こう。
P.S
町田のボヘミアン、純粋なサックス吹き、
俺が知る限り唯一のヴィニールジャンキー、
久しく会っていない心の友達にこの文章を捧げたい。
あれやこれやと話したいぜ、そうすりゃきっとこう言うんだろう、
「おー、俺も見たかったぜ!」
はたまた、
「あー、俺も見たぜ!」
などと笑うのかも知れない。
何処に流れ着いてもアンタは心の友達。