October 05, 2009
魂の解放区

素晴らしい出来事と最低卑劣な出来事は常に隣り合わせで共存している。
そして俺は素晴らしい出来事を最低卑劣な出来事よりも多く書き綴りたい。
先日、粋な男女と共に一時間の休憩時間を過ごす。
モッズからニューヨーク、ガレージからブコウスキー、ヌーヴェルバーグからエッシャー、
美術館からドキュメンタリー映画、シュルレアリスムから喫茶店、
話は四方八方、縦横無尽に転がり続け、
「こんなモン一時間ではとても足りんがな」などと考え、焦りにも似た気持ちで喋り続けていた。
すなわち、俺は自らの思想を伝えたいだけのあん畜生、
分かってくれと知ってくれの共存、俺は執念と狂気を持ち合わせている。
そしていつからか満面の笑みと哀愁のしかめっ面、両極端の面を同居させる様になった。
歳を重ねる事と丸くなる事が必ずしも比例するなんて俺には到底思えない。
そうなる時は自然とそうなるんだろう。
誰かが言ったぜ、
「眉間に皺の跡がついてるね」
それと同様、
「笑い皺が消えないね」
とも言われて然るべきだ。残念ながら生きとるさかい。
顔は全てを表すだろう、嘘はつけない。
夜には下北沢という街でシオンを観た。
執念と狂気の表情で男は唄い、俺はパールライトのおっさんの仕草やら笑顔を終始思い浮かべながら胸を締め付けられていた。
昨晩、今村竜也氏と二人だけのパーティに興じる。
仕事を終え、電話を入れたその瞬間からパーティは始まっていた。
俺達は電話越しにコールセンターの凶悪クレームという名目の元、自然の流れでふざけ合っていた。
「おい貴様、とにかく50分後に来い!」
「かしこまりました。ギターなんぞをお持ちしてもよろしいのでしょうか?」
「おー貴様、好きにしろ。情熱も忘れずに持って来いよ」
俺は渋谷駅の喫煙所付近で、8分12秒に亘りこんなやり取りを楽しんでいた。
そんな訳で男は天国に一番近い場所へとやって来た。
ビールを呑み、日本一の唐揚げと肉団子を平らげ、世の中のほとんどの人間が知らんとされる名曲を次々と唄い、煙草を吹かしながら笑い転げていた。
外は雨、パールライトのおっさんは数え切れない愛情達と共に天国行き。
俺がいつか死んだら呆れた調子で「こんなガラクタばっか残しやがってふざけんなよ」と笑ってくれ。
棺桶の中に宝物を詰めて俺はヴィニール盤の燃えカスと誇らしい魂達と共に天国行き。