September 13, 2010
黒い指輪とチェルシーホテルに寄せる短編 ’10
突然消えたよ、
朝に消えたよ、
親愛なる両手両足首周辺に巻きつけられた19個のアクセサリー、
突然18個になったよ。
探したよ、
レコード袋の中、
ニベアクリームの缶の中、
チャーミングポマードの蓋の中、
そんなとこにある筈もないのに。
ファッキンな胸中引っ提げながら仕事に行ったよ、
人間としての最低限モラルを著しく下回った、
「IQジャスト2.7」な電話口の輩に尋ねたよ、
「あのー、そんなデジタルの話はともかくボクの黒い指輪御存知ないでしょうか?」
返事になど0.27%とて期待出来んもんやさかい(SKI)、
一目散で部屋に戻ったよ、
探したよ、
モダンソファの下、
イカサマベッドの脇、
窓のレール、
そんなとこにある筈もないのに。
そしてようやく発見したかに思えたよ、
ファウンドしたかに思えたよ、
歓喜の渦に巻き込まれたよ、
狂乱極まるパーティさえ企んだよ、
「あった、あったぞ!」
俺は吠えたよ、
だけど掴んだモノは黒い輪の形をした埃(HKR)だったよ、
猫がガォーと鳴く程怖い顔になったよ、
「違う、違うぞ!#$%”!P*#¥¥3$=%¥<Q!!!」
俺は吠えたよ。
ヤツはまだこの「断固ノー・スゥイート」な部屋のどこかにいるんだよ、
5畳弱の中に18畳分の荷物を詰め込んだこの、
かの有名な「ノー・ダコタ・ハウス」の中に。
値段は100円だったよ、
値段など重要じゃないよ、
右手中指を長年に亘り独占していたあの黒い指輪が重要なんだよ、
100円出せば同じモノが手に入るなんて浅はかな知恵など捨てろよ、
一緒に旅を繰り返したあの黒い指輪が重要なんだよ。
ところでドサクサ紛れに神聖極まる「チェルシーホテル」3泊分の小部屋を確保したよ、
航空券を正式に確保する前の快挙だよ。
尋ねたよ、
「そこにチェルシーホテルがあるのに泊まらん理由など一体どこにある?」
ないよ、
ニューヨークだよ、
真夜中に確定ボタンを押した時、
右手中指は確かにまだ黒い指輪が独占していたよ。
万が一、ニューヨークに飛び立つ前までにあの黒い指輪が出てこないなら、
俺はマンハッタンにて猫がガォーと鳴く程怖い顔で吠えるよ、
「ホェアー・イズ・ブラック・リング?ドゥ・ユー・ナンチャラ・ハプンッ!!」
どっかのキングバーガー野郎がモノホンの銃を突きつけてきやがるかも知れない、
賭けだよ、
「こちとらモデルガンを持ってるから心配ないよ」
浅はかな知恵で挑む人生の賭けだよ。