November 21, 2010
踊るフーテン達 ’10
真っ昼間の駅前、懲りもせずロードバイクの前タイヤにスーパー袋を絡ませる。
引き裂かれるスーパー袋、転げ回るボトルコーヒー、ミートソース、何やらかんやら。
俺が前傾姿勢で崩れ落ちて行く様を真横のカップルがコマ切れフィルムを見るかの如く眺めながら実況する声が聞こえる、
「チョッチョイッチョッチョッチョイーッ、オーッ!」
そして拾ってもらうボトルコーヒー、掛けられる「大丈夫ですか?」、
沁み込んだ苦笑いと赤面を軽く8周通り越した驚異のお道化者気取りで交わす、
「これはこれはどうも!!」
引き裂かれたスーパー袋なんて「読まない森鴎外文庫本」とまったくもって同義、すなわち無意味だ。
右脇に900mlボトルコーヒー2本、ミートソース、何やらかんやらをさぞかし大事そうに抱え込み、
左手にさぞかし大事そうにブレーキを握り締めながら思う、「こういうの、もう飽きたよ」。
土曜日の混雑極まる時間帯に天下のゴッホ展へと出向く、
待ち合わすポッピン酔いどれガールからジリブルと電話が鳴る、
「アンタ、またどうせチンピラみたいな格好なんでしょ?」
「好きな言葉は個人」
僅か6秒後、ヤツがワールドタイムで俺を発見する、
「アンタ、後姿一発で判るわ」
招待券を誇り高き自慢面でチラつかせている、
「君、イカすね!」
そしてフィンセント(勝利者)の絵を人混みに紛れ込んで鑑賞する、
途中、相も変わらず絵を見に来たのかおっさんの禿げ頭を見に来たのか定かでなくなるが、それでも舐める様に鑑賞する。
ボブディラン絵画展を滑り込みで鑑賞し、六本木なるイカサマタウンにも確かに存在する生き残り喫茶に潜り込む。
珈琲を啜りながら、喋り続けるポッピン酔いどれガールの言葉に耳を傾ける、
「ワタシ、アンタと来る気がしてたわ」
沁み込んだ苦笑いと赤面を軽く8周通り越した驚異のお道化者気取りで交わす、
「ボクもそんな気がしてたわ」
面倒事を招いているのはいつだって俺自身だって事は存分にありうる話だ、
それと同様、俺はどうやら縛りとは無縁の自由の立役者だって事もそこそこにありうる話だ、
代々木上原からヨロヨロと歩いて帰る、シュルレアリスムの事を考えながら。