January 17, 2018

ブラザー '18


猿小屋の目の前、やけに背の高い黒人が道行く日本人に向けて叫んでいる、

「excuse me!
excuse me!」。

それを無視して素通りするあん畜生達、それは何も「黒人だから」ってワケじゃない。ヘルプに答える自信がないからに他ならない。

困った時はお互い様だ。オレだって何度も異国の地で見知らぬ人間達に助けていただいた経験がある。

オールオーケー、その場に偶然お出まし果敢に近寄る英語力からきしゼロ野郎このワタシ、解決出来ない場合には最も得意とする「sorry! I don't know!」の一点張りで切り抜けるって魂胆で挑みにかかる。

「ブラザー!どしたん?」

ヤツはスマートとは呼べない機器を見せつけお構いなしの捲し立て英語でヌカす、

「すなわち、このバーに行きたいってワケなんだ」。

さて、そのスマートとは呼べない機器を断固スマートに取り上げ場所を確認する。

目的地のピンが立てられた場所、それは紛れもなく猿小屋のど真ん中だ。しかし、猿小屋が入ったビルにそんなバーはない。

「ブラザー、確かにこれは此処だ!しかし此処じゃないで!」とか何とか生粋の日本語でホザき再度画面を確認する。そんな時、ヤツは無論、純粋な「ホワッツ顔」だ。

間髪入れず告げる、

「おー!分かったぞ!これ、ピンの位置間違っとるで!な?この機器、スマートとは呼びたくないよな!ブラザー、この機器に相応しい名称一緒に考えようや。ところでオレ、今からライヴなんよ。来んか?ソウルミュージックって日本にもあるけぇ」とか何とか伝える英語力などからきし皆無野郎このワタシ、

ヤツを「アーイエー!」の一点張りでそのバーまでエスコートし辛うじて告げる、「this place!」。

そこまでずっと英語だったブラザーが去り際にオレに云ってくれるであろう言葉はやはり「thank you!」しか考えられないと踏み、返す言葉なら「no ploblem!」のみでスタイリッシュにキメようと思っていた。

目的のバーまで辿り着き、ブラザーは握手を求めてきた。その手を固く握り返した時、ヤツは生粋の日本語で云った、

「アリガト!アリガト!」。

不意打ち極まる日本語に「no ploblem!」って単語さえ吹き飛び叫んだ、

「アーイエー!」。

スタイリッシュってのは所詮、いつまで経っても板に付かないって仕組みなんだろう。

その直後、オレはステージで唄っていた。辿り着いたバーで小粋に呑んでいるであろうブラザーにも向けて。

「考え事をしてるからあんまり話し掛けないでくれ。だけど道を知りたいならいつでも俺に聞いてくれ」。

オレだって人として誰かの役に立ちたい。

無論、役に立てない場合は
「sorry! I don't know!」、

人として、旅は続く。


 


drecom_eroom5session at 11:23│Comments(0)│ │散文 

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