February 2018
February 18, 2018
寸暇を惜しんで '18
何年か前、「何かしらの保険には入っておいた方がいい」という考えの元、あらゆる資料を読み漁っていた。
読んでも何の事やら、バロウズの小説以上に意味不明だったが、とにかく「死亡保証金」の額だけを凝視していた。
そんなある日、マイビッグマザーが云った、「アンタはなんで死んだ時の事ばかりを考えとるの?そういうのは普通、事故とか病気の事を考えて入るもんやで」。
この言葉には心底、目から鱗だった。オレは死んだ時の事ばかりを考えるクセがあるらしい。
「コレ、持って帰れば?」と、何枚もある中の一枚の写真が差し出された。京都にいた頃の3歳のオレらしかった。
ビッグマザー曰く、「なんでコレが今のこんなんになったんや?」だ。
少なからず築き上げてきた財産を後世に残したい、いつか産まれるんであろうオレの子どもに「ボクのファザーはとんだロクデナシだったが、こんなイカしたモノを残してくれた」なんて云わせてやりたい。
そんなワケで、一昨年くらいから血を残したいなどと一丁前に意識する様になった。やはり、死んだ時の事を考えるのがクセらしい。
そして無論、相手は行方不明だ。
まだ死なないでいてもらう為に、生き続けていただく為にと、気付けばジャスト2年振りに広島に帰った。
安心した。死ぬ気配などまだ微塵もないって事と、その記憶力の正しさに。縁起でもない事を考えていた。
帰省中、本ばかり読んでいた。トムウェイツのヒップ極まる個性に彩られた与太話が羅列された本を。
ビッグマザーが云った、「スンカを惜しんで読書するんやな?誰に似たんや?」、
オレはスンカの意味が分からず問った、「何を惜しんでって?」。
「寸暇や。本読んどるのに知らんのか?」、
悔しかった。いつだって言葉には敏感でいたい。
東京に挑む為だけに稼いでいた19の頃、餓えて、草臥れて「バス停のベンチでもう死ぬねん」と云ったこの女に包丁を突き付けた事がある、
「オレはお前の為に働いとるワケじゃない。殺したろか」。
あの頃があって今がある。
「寸暇を惜しんで」今、書いている。もう誰も死なないでほしい。
February 10, 2018
記録 '18
年が明けた時、今年こそは毎日映画を観てやるなどと意気込んでいた。しかしそうは問屋が卸さないってのがこの世の仕組みだ。どうせ、あの世でもその世でもそうなんだろう。
寒いのはもういい。まるでワンパターンでセンスがない。タイトルなら「飽きてますよ、、、冬」だ。7inchシングルカットでいける。
こちとら、明確に夏が好きらしい。夏の真っ直中に「早よ冬にならんかな」だなんて矛盾の神様みたいな戯言は口にしない。
近頃は録音の事で脳内オーバーヒートだ。車の免許を取るだなんて来世でも無理だろう。
今はエロヴィデオを観ても「これはどんなマイクで録ったの?」などと聞きたくなる季節だ。
品がない話は嫌いだ。しかし事実だ。
「ワタシはエロヴィデオなんて観ません」などと涼し気なモテ顔でヌカす男は信用出来ない。
今年はずっとそんな胸中を抱えたまま過ぎ去るのかも知れない。神経はいつだって過敏だ。
何が正しいのか、ボクは善なのか悪なのか無なのか、それさえも定かではなくなっている。締切を決めて事に臨んではいる。締切がなければ永遠に作業は終わらないって仕組みだ。
テイクを重ね、これはいい、これもいい、いや、これは駄目だ、君はノータリンか、などと自問自答を繰り返す。しまいには「これ、歌詞から書き直そうか?」「こんな曲、ええか?」となり、またゼロから仕切り直しなんて事にならない為に締切とは必要だ。
持ち前の実験精神を駆使して二本組のチープ且つモダンなコンデンサーマイクを手に入れた。
相棒のジェニーが三千円くれた、「カンパするぜ」。粋な男だ。
先日、年が明けて初めて外に呑みに出た。話す内容は無論、音楽の話だ。
結局のところ、音楽文化にまつわる話をしている時が何よりも胸躍る。結婚だなんて来世でも無理かもな。
何しろ映画は後回しだ。自らの仕事が先だ。