October 2018
October 18, 2018
ポリシーで笑え '18
photo by ゴトウケンジ
'18.10.5 - 10.15
ブランニューアルバムを引っ提げての旅、第一弾は下北沢を残して完遂。
この場合、書き記す事は少量でいい。スペシャルサンクスを一から千まで上げるのは野暮の極みだと思っている。
シャツとパンツに靴下少量、そして物販大量のいつものスタイルで旅に出た。今までと違うのは、増え続ける物販に対応すべく豊岡産のトランクを引き摺って歩いていたという点だ。
今まで「トランクを引き摺る」だなんてオカマがやる事だとキツく決め込んで避けていたが、甘える事も時には重要だったと思い知った。産まれてこの方、初めてトランクを引き摺って歩いた。
台風は逃げ、雨はゼロ、移動しては二ヶ月ちょっと前には産まれてもなかった詩を唄い、そして一本毎に身体に染み込んで行くのが分かった。
座右の銘なら「訳分からんままでゴー」、密度の濃い日々を振り返りながら最終日までに全てをナマで演る事が出来た。
半分以上をサスペンダー姿のまま眠り、とっとと目を覚ませばチェックアウトして次の街へと向かう。移動が少ない時は、オレみたいなモンには持ち合わせがない「何か」を持っている粋な人達が甘えさせてくれた。
すなわち、一人で演っていながらてんで一人ではないらしい。何時だって君とアンタと貴方とお前と貴様が活きる力をくれる。この場合、気狂いだろうが入墨だらけだろうが肌が何色だろうがゴミだろうが何だっていい。秩序がある限りは。
「草臥れ果てて負ける」だなんてオカマのやる事だろう。オレは御免だ。
大量に持ち込んだ筈のブランニューアルバムは売り切れた。何も千枚も売れたって話じゃない。
話じゃないが、最終日にゼロになった時には得意のダブルサムズアップでソファに倒れた。最もクールだと思っている立ち回りが実現した瞬間だ。
唯一、スペシャルサンクスをこの場で書き記すなら、お天道様だ。オレはドンクサイのと雨ってのが大嫌いだ。生粋の晴れ男を気取らせ続けてくれてありがとう。
引き続きヘビーリッスンを決め込んでくれたなら嬉しい。
敬具。
October 05, 2018
【ライトアップ・ザ・ポリシーズ】ライナーノーツ B面
7, 喜怒哀楽な男 -a delightful man-
この曲は25歳くらいの頃からあった。ライヴでは全く演ってなかったが、歌詞はずっと頭に残っていた。今唄うのはどうかとも思ったが、歌詞を読みながらオレは何も変わってないんだって事になり入れる事にした。六弦を一音下げてギターでベース音をオーバーダヴィングした。
8, マリファナ女が宙を舞う -Marijuana girl flying in the air-
今年の5月か6月辺りに突然出来た。出来たというか、気付けばあった。歌詞は蛇口を捻れば出てくる水かの如く一気に書き上げた。この歌詞の全てを説明するのは自らでも困難だが、コーラス参加のカンダケイコが云った言葉が印象的だった、「この主人公は死んだの?」。解釈は千差万別でいい。「作り笑いなら止めておけ」「カテゴライズは身体に毒」、これはオレの口癖。
9, その闇 -that darkness-
この曲は当初、録音する予定じゃなかった。他にあった「ないものねだりのオンパレード」という出来かけの曲を色々試しながら、どうにも気に入らず苛立っていた時、持ち込んでいたレコーダーからこの曲が聴こえてきた。歌詞は随分前からあったが、ちょっと手直ししてギターを至って静かに弾いた。「大きな声で呼びな。大きな声で叫ぶ名」。
10, 今日はパレード -today is a parade-
息抜きに海へ行き、洞窟までの長い距離を泳いだら波にさらわれそうになって溺れかけた。ヘロフラになりながら帰った後、小林琢也のギターを録った。音を聴いたら直ぐに元気は戻った。この曲は小林琢也のアヴァンギャルドギターがあってこそだ。邪魔者は要らないパレード。
11, 手紙 -the letter-
9分16秒、今まで作った中でどうやら一番長い曲になった。でも実は歌詞はもっと長いヴァージョンがある。13分くらいになるかな。この曲を収録した盤を一刻も早く作りたかった。当初のアルバムタイトル候補はそのまま「手紙」だった。完成して嬉しい。ハープを録音するのには時間がかかると思ったが、なんと仮歌を唄いながら同時に試しに吹いた一回限りのヴァージョンをそのまま採用した。
御国をあげての戦争をまた始めるつもりですか?
目の前の争いだけで手一杯なのに
何処に行けどもいい奴が居て
悪いヤツが居るってそれだけの話なのに
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オールオーケー。あとは各々の解釈で楽しんでもらえます様に。
October 03, 2018
【ライトアップ・ザ・ポリシーズ】ライナーノーツ A面
遂に10月を迎えた。9月29日、製作開始から僅か2ヶ月足らずで完璧にキャラメル包装されたパッケージ作品が猿小屋へと到着。
カッターで段ボール箱を開ける時、あの瞬間こそがロマンの塊だ。ありとあらゆる麻薬をまとめて打ち込んだ様な胸中にもなる。これはさぞかし品のない例え話だが、とにかく高揚感で空も飛べそうってな気分だ。脳内麻薬だけでトリップは充分に可能だ。
音に始まりジャケット撮影、ブックレット、映像、ホームページ刷新、フライヤー作成、資料作り、エトセトラ、弾をしこたま詰め込み、そして一発ずつを確実に発射する。
その作業全てに携わってくれた小林琢也を筆頭に、ワイルドタフネスな猿小屋仲間達がいたからこそ出来た芸当です。
盤が届いて、初めて客観的に音を聴けた気がする。オレが今、どうかホザかせていただきたい言葉はたったの一つ、
「コイツ、なかなかええがな」って事です。
少なくとも8月から9月にかけて、「ポリシー」って単語を世界一口にし、宇宙一紙に書いたであろうポッピン野郎このワタシ、今はもうすぐ始まる旅の事を思考しています。そして2019年の事を目論んでいます。
すなわち、作業ってのは永遠に終わらない仕組みなんだな。
さて、旅に出る前に簡単なライナーノーツ、というか、録音した際のドキュメントを残しておきます。書き出すとキリがないのでなるべく簡潔に。
おまけに歌詞カードには載っていない、どっかの資料で提出してくれと頼まれた曲の英語タイトルも残しておきます。レッツへビーリッスン!
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1, 恋とスモーキンシガレット -love&smokin cigarette-
竹野に辿り着いて最初に録音した曲。どんな手法で録っていくか、小林琢也もオレも最初は探り探りだったが、この曲を録る過程で直ぐに理解し合えた。試しに録って、聴いて、録って、聴いていく。このアルバムのテーマは当初、オーバーダヴィングはなるべく避けるって事だったが、いきなり「絶対にここにはギターソロが要る」と思いついた。先が思いやられもしたが、断固実行した。ライヴとは違う広がり方と唄い方。歌詞はいつか、ジェニーの運転する車の助手席で吹かしていた煙草の灰がお気に入りのブーツに落ちていく瞬間を見た時に、頭の中でほとんどを書いた。
2, 珈琲の匂いのする方へ - to the smell of coffee-
曲自体は前からあったが、言葉が巧く乗らず、唄い方も分からずにいた。しかしどうしてもこのアルバムに入れたかった。未完成の状態で試しに録り、「コレはダサいな。考える時間をくれ」とか云いながら徐々に完成へと向かった。この曲には女コーラスが断固必要だと思っていた。カンダケイコに曲を送ったら、「悪い感じなジャズシンガーっぽく?それからウィスパー姉ちゃんな感じでいく?」などと気の利いた返事があった。そして録音し終え、ヘッドフォンを外した瞬間には興奮して云った、「おい、ジョーンバエズやないか!」。イメージ通りだ。最高だ。
3, ロールオンザストリート -roll on the street-
曲自体は前からあったが、言葉が巧く乗らずにいた。しかしどうしてもこのアルバムに入れたかった。「とにかく今日は時間をくれ」と、丸一日かけて練り直したら一気にハマる言葉が降ってきた。それから何度も録り直し、遂に完成を迎えた時には完全なるトリップ状態だった。小林琢也に聞いた、「なぁ、コレ最高じゃない?なぁ、どうなん?いや、最高やろ」だとか何だとか。その日の夜、「今日はこの曲の完成を記念して焼き肉を食べよう!」と小林琢也が云った。いただいてからぐっすりと眠った。旅の詩。
4, メンフィスのバラッド -Ballad of Memphis-
2012年、初めてメンフィスに飛んだ。その時、目の当たりにした光景はまさにジムジャームッシュ監督の「ミステリートレイン」の世界そのものだった。当時、何度かライヴでは唄っていたがその時とは曲の構成も歌詞も異なる。記憶はずっと頭の中にある。どうか絵を浮かべながら聴いてほしい。旅の詩。
5, 街の灯 -city lights-
2017年9月、オレはアメリカを再訪する事に全てを賭けていた。サンフランシスコに「city lights books」という輝かしい歴史を持つ本屋がある。「その本屋の前で大好きな誰かと待ち合わせをしたなら」という空想の元、一気に詩を書き上げた。シティライツの間近にある「North Beach Hotel」の、とても綺麗とは云えない一室で。曲は東京に戻ってからつけた。
6, 自由な犬 -free dog-
竹野で最後に録音した曲。当初の目標は10曲だった。しかし10曲を録り終えた後、もう一曲どうしても必要だと思った。合宿最終日、丸一日かけて一から作った。どうしても竹野って町での風景をパッケージしたかった。その場所には小林琢也の愛犬、めーめちゃんがいた。これまで何度も会った事のある奴だ。どうやって竹野への思いにケジメをつけるべきか、悩みあぐねているオレを横目にコイツは呑気に横で眠り惚けていた。この生意気な愛すべきアウトローをテーマにしてやろうと思った。ラストの言葉はコイツのセリフだ、「使い古しの言葉は捨てろ」。一丁前な犬が気取って吠えやがったセリフだ。
レコードで捉えるとここでA面終わり。裏返したらまた明日。