March 2019
March 08, 2019
タンブリンダイス '19
電車ーバスー飛行機ーバスを乗り継いで13ヶ月振りに福山へと帰った。目的はまず一つ、お母ちゃんに会う為だ。
ヤツはボブディランの二歳下。まるでボケる要素もなく、得意料理を振る舞い、TVのクイズ番組に答えを出し、オレを「汚いルパン」などと罵っている。
オレはここぞとばかりに食べまくり、三日間でジャスト二週間分は平らげた気分だ。
大好きな自動車博物館へと出向き、粋なトランクを後ろに乗せたバイクに跨がり、モダンなストライプソファがあるクラシックカーの運転席に鎮座する。
いくら気取ってみたところでオレには決定的な欠点がある。免許がないってコトだ。
何十年か振りに「鞆の浦」まで足を伸ばし、何をするでもなくほっつき歩き、ただ其処に居る人達を眺めたりする。
精神は安らぐが同時に不安は常に隣り合わせにある。このままじゃいけない。
「また来ます」とお母ちゃんに告げ、雨のトーキョーへと戻って来た。いつからか此処が戻る場所になった。今や福山よりも長い年月、この苛立ちの街に居る。
一念発起して、長年燻っていた歯の治療に出向く。病院に行くコト自体数年振りだ。完璧にヤラレる前に出来るコトはヤっとくべきなんだろう。
レントゲン写真を見ながらドクターがヌカす、「格闘技とかやってました?」。歯を食いしばる力がヤケに強いらしいが、残念ながらオレはただのガリヒョロボーイだ。
診察台に寝転がる「まな板の上の鯉」このワタシにドクターがホザく、「もしも痛い場合は左手を上げて下さい」。
そして何もされてない段階から一目散に左手を上げようとしている男このワタシ、「オレってひょっとしてオカマの最先端に君臨しているのかも知れない」、一人ごちる。
治療を終え麻酔で痺れたベロを気遣いだらしなくヨダレを拭きながらドクターに告げる、「とうもはりかとぅこさいまひた」。そう、一人ではてんで無力だ。
口の中にはクスリの不愉快な味が残っている。オレはソイツを今、レモンハイボールにて流し込んでいるところ。どうやら不愉快な味は一層広まるばかりだ。
このままじゃいけない。
そう思い、ギターを抱えたら簡単に曲が出来た。重要なコトはまず一つ、腐らないってコトだ。
March 02, 2019
三月の殺伐 '19
いい映画を観たからと云って、ソレだけでいい一日とは呼べない。
美味い御飯を食べたからと云って、ソレだけでグッスリとは眠れない。
サイコビリーを回しながらファーフゥーと踊り叫んでいても、ソレだけでオレは最高だなんて思わない。
核の部分が霞んでいると、精神も歪んでくる。気取るならブレるな、最低限のマナーだ。
二月は東京でライヴが四本あった。各地の人間らしい人間達と会い、よく笑い、よく呑んだ。いい一日だった。
いい写真を何枚も送ってくれるカメラマン。カメラマンズ。いいカメラで撮ったいい編集。オレには出来ないコトをやってくれる立役者達。
いい相棒にいい理解者、いいレコードにいい悪友。どれもこれも最高だ。最高なクセに、ソレだけではまだ満足出来ない。核があと291倍、際立ってないと真の満足に手は届かない。
「(I can't get no) satisfaction」を今こそ爆音で回してくれ、無論7インチで。
我侭だと人が云う。求め過ぎだと人が云う。生意気だと人が云う。
パズルを埋める作業は続いている。多分、永久に続くんだろう。選んだ道である限りは。
明日から何日間か広島へ行く。トランクにはまず本を詰めるだろう。サリンジャーとかジムトンプスンとか。あとは少しのパンティと、アーガイルの靴下さえあれば充分だ。
そしてお母ちゃんはまた云うだろう、「アンタ、髭剃れ」「息子と思われたないから離れて歩いてや」。
最高だ、踊り続けよう。