May 02, 2010
「心の風来坊」 Vol.6
旅の風景、行動、断片を思い出す度、とんだセンチメンタルが襲い出す今日この頃、
煙草とお酒、モダン喫茶と缶コーヒー、女と男、フカフカ布団と吐き出す唄、
求めていたモノは所詮、それらの類いだ。
真夜中のホテルで、疲れも知らず、広々とした机の上で、
一日に使ったお金の計算をするのが、好きだ。
真夜中のホテルで、眠りもせず、暴風雨ですっかりびしょ濡れになったブーツを、
ドライヤーを駆使して乾かすのが、好きだ。
大衆酒場で、モダン喫茶で、オンボロ定食屋で、ライヴハウスで、ベッドで、飽きもせず、
気の合う人間と永遠なる与太話を繰り広げるのが、好きだ。
時には、会話もなく、各々が各々の課題について思考錯誤しながら、
物思いに耽るのが、好きだ。
置いてあるスポーツ新聞に、一通り目をやりながら、珈琲が到着すれば、スポーツ新聞を横に置き、
意識を珈琲に切り替えるその瞬間が、好きだ。
街の名前さえ知らん所で、カートを引きずって、ハードケースを抱き締めて、
我が物顔で歩きまくるのが、好きだ。
しかめっ面をして、重い荷物を持ち上げて、
長い長い階段を上りきった時の風景が、好きだ。
名古屋から大阪への移動中、久方振りに聴いたブギの女王、
笠置シヅ子の陽気さ加減が、好きだ。
一度は誰かの手により、ゴミ捨て場に捨てられたトランクを救い出し、今や毎回、大事にステージまで持ち込んで、
そいつを見やりながらチューニングをするのが、たまらなく好きだ。
このトランク自身、「捨てられた筈の俺が何故こんなところに?」、
そう不思議がり、喜んでいる筈だなどと、勝手に解釈するのが、好きだ。
ぬいぐるみに話しかける、確かに生きている、
この感覚が、好きだ。
午前の新世界で、日活映画の様な風景の中で、音楽の事を少しだけ忘れて、
スマートボールに全神経を集中させるのが、好きだ。
一人が、好きだ、
バットしかし、二人が、好きだ。
二人でいる事の心強さと余裕、
お互い、奇跡的な味方であり、
何より敵でもある人間同士が、
何日も行動を共にして、闘う様が好きだ、
たまらなく好きだ、
お金を貯めて新しい場所へ。