May 27, 2010
お祭りはまるで終わる気配がない ’10
2001.5.26~5.27
東京に出て来て直ぐ、バンド募集の貼り紙を貼りまくった。
とにかくバンドを結成する事とレコードプレーヤーを手に入れる事で頭がいっぱいだった。
知り合いや仲間など皆無、ただ確実に足を踏み出している事実だけに酔いしれていた。
そして一ヶ月弱で「The Kickstart Driver」を結成、
そして上京から半年を待たず、俺はバンドメンバーを引き連れて広島県福山市でのライヴを決めた。
「こんなにも事は巧く運ぶのか」、思っていた。
客は何故か大入りで、打ち上げの席では号泣し、優しくされる事に戸惑っていた。
そしてその足で福岡県小倉市へ向かう為、真夜中の高速道路をぶっ飛ばした。
「わっしょい百万夏祭り」、一大祭り出場をかけたオーディションに参加する為だった。
ベースの男はガラが悪く、俺より一つ年上で、そして生粋の九州男児だった。
俺は後部座席で、車内BGMはT-BOLANで溢れ、車中ではその素晴らしさについて語り合っていた。
素敵な別れさ 出会いの未来があるからー
夢叶う日まで 今はここでそう Bye For Now
次の日の真っ昼間、オーディションは市の会議室みたいなところで行われた。
会議机がズラッと並び、そこには審査員が偉そうにペンを持って何人も座っていた。
そんな光景には心底虫唾が走った。
ぶっ壊してやろうと粋がっていた。
10Wの小さいアンプを用意して二曲演奏した。
曲はシンプルなロックンロールでロカビリー気取りだった。
アンタはそんなにお偉い人なんですか?
大した苦労しちゃいないのに威張るんじゃねえぞ、おい
こんな歌詞を持つ「独り言ROCK」、俺のターゲットはただ一人で、
それは審査員席に鎮座している「ソニー」のおっさんだった。
そのおっさんをあからさまに指差して俺は吠え、10Wのアンプとドラムに飛び乗り、そして蹴散らした。
そんな時、ベースの男はソニーのおっさんの目前まで迫り、
サングラス越しにおっさんを睨みつけながらベースを気だるそうに弾いていた。
男はこんな時の為に10メートルの長いシールドを事前に用意していたのだ。
「まったくもってイカす」、俺は思った。
「まぁ、こんなモンやろ」、終わって笑い合い、お互いが爽快感に満ちていた。
オーディションを突破し2001年8月、「わっしょい百万夏祭り」出場の為、再び小倉へと向かった。
露店でたむろするカップルや橋を渡る輩共に俺はマイク越しに盛大に叫び続けた、
「小倉城見る前にこのライヴ見て行かんかいこの戯け野郎!!」
俺は口が悪かった。
川に浮かんだ野外ステージへ生粋の九州男児達が10人位ステージに飛び込んできた。
男達は全員片手に打ち上げ花火を持ち、演奏中、それを天に向けて何十発も発射し続けた。
俺はエレキギターを肩から外し、ガイコツマイクを手に持ちベースの男に近寄り肩を組み、
一つのマイクで二人して狂った様に叫んでいた、
「わっしょいわっしょい」
演奏後、司会のお姉ちゃんが半分驚き半分呆れた仕事口調で言った、
「皆さん大丈夫ですかー?やってくれましたねー」
あれから丸9年、お祭りはまるで終わる気配がない。
すみません、幸せはお幾らですかー
もうすぐこの僕も30歳ー
BGMはあの男、お祭りはまるで終わる気配がない。