May 28, 2010

東京サングラスマン ’10


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めっきりとレコード屋へ出向いてない感漂う今日この頃。

その分、本を読み耽り、ドロップアウトした男の物語に入り込む。

適当な本を引っ掴んで三軒茶屋まで歩く、支払期限をとっくに越えた水道料金を支払う為に。

途中、銀行に立ち寄れば思いもがけずビッグマネーがこの目に飛び込んでくる。

これは神経すり減らしながら、それでいて真っ当にクールな仕事を切り抜けて稼いだ俺の生活源だ。

三軒茶屋の、7年程前に働いていた雑貨屋を覘く。

あれから7年も経過しているとはまったくもって閉口の類い、俺はあの頃、確かに22歳だったのだ。

雑貨屋は一般大衆の小物を集めた平凡店に成り下がっていた、哀愁と社会を感じて俺は店を出た。

その足で向かうのは上野界隈美術館、

「休みの日は芸術鑑賞」、こんな方程式が様に成りつつある昨今の胸中事情。

そして何一つ口にしていない俺は、

「アメ横」なるハイカラ街を練り歩きながらご多分に漏れずモノホンモダン喫茶へと潜り込む。

破れて綿が飛び出たボロボロのモダンソファ、イカす喫茶の必須条件「食器は欠けている」、

「サーモンステーキ」なるモダンメニューを注文すればシンプル極まる「鮭定食」がやってきた、

御飯を平らげながら思わず噴き出して呟く、「完璧だ」。

そんな時、店内BGMは吉田拓郎「明日に向かって走れ」、

こちとら素直に受け入れる、「明日に向かって走ろう」。

引っ掴んできた本はブコウスキー「ポスト・オフィス」、

町は、気の狂ったうすのろで溢れ返っている

そう思考する、自らしか信じない男が時に臆病風に襲われる、

俺って本当は間抜けだったのか?
この不幸は全て自分で招いているのか?
ありうる話だ。
実は俺っておつむの足りない、生きているだけでも御の字な奴って事も充分ありうる。

人間らしい人間に28798Vのスポットライトと大ベストセラーを。

ところで人は、俺は、何故時にサングラスが欲しくてたまらなくなるのか。

外でかけた例などほとんどないクセしやがってだ。

そんな訳で約9年振りに、一瞬で全ての風景を暗闇にさせる真っ黒いサングラスを手に入れる。

上野とはモダン喫茶、昭和定食屋で溢れ、そして香港を思い出させる香りが漂う街だと気付き、

日も暮れる頃、電車へ飛び乗り再び物語に入り込む。

誰も彼もどいつもこいつも後悔させてやる、

そんな作家に、人間になると俺はとっくに決めている。


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drecom_eroom5session at 23:49│Comments(0)TrackBack(0)短編 

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