July 02, 2010
ドアをノックするのは誰 ’10

AM0:46、
久方振りに舞い降りてきた曲を意気揚々と練り込んでいたら、
ヘッドフォン越しにドアを叩く音が聞こえる。
よくある幻聴かと思い、
ヘッドフォンを外して耳を澄ましてみれば驚く事にドアは確かに叩かれ続けている。
これは苦情か、大家か、あの男か、ひょっとしてお姉ちゃんか、
とりあえず選択すべき手段は「吠える」でも「謝る」でもなく、
この期に及んで「居留守」だ。
真夜中の居留守、スリル一級の代物。
ところで負い目を感じる自由、これは非常に立場が弱い。
このブタ小屋から音楽を取り除いたら一体何が残る?
答えは俺と愉快なゴキブリ達。
一瞬「引越し」が頭を過ぎるが止めにして、
俺はそれまでの八割増しの音圧でギターを弾き、ウーアーハーアー唄い続ける、
のも止めにしてレコードは最小ボリューム、梅酒ロックを煽り、お澄まし顔にて眠りこける。
今頃になって苦情が寄せられるのなら俺は手段を選ばなければならない、
何たってこの部屋の売りは「苦情とは無縁」だ。
PM17:02、
ポッケに入れた携帯電話を取り出したら驚いた事に画面は大家様と通話中の表示、
ロックが解除され俺の電話は勝手に電話をかけていた、よりによって大家様に。
俺のポッケのガサガサ音を2分38秒に亘り聞かされたであろう大家様からはすかさずのコールバック、
「何かありましたか??またお電話します!」(留守番電話)
この偶然で一つだけ分かった事はドアをノックしたのは大家様ではなかったって事だ。
曲を仕上げよう、ウーアーハーアー唄おう、
唄は夜、突然生み出される仕組み。
AM2:36、
もしもドアがノックされたなら今度は喜び勇んで開けてやろう、
俺と愉快なゴキブリ達が迎え撃つ。