November 11, 2010
ザ・ドアーズ ’10

「なぁ兄貴、声が出ん。よって、まるで仕事にならんぜ」
開始から僅か15分、俺は遂に仕事を諦めた。
いくらハッタリを駆使して奮い立たせてみてもとても追いつかない事がある、日常茶飯事で。
俺の仕事が喋る事、伝え続ける事、それでお金を稼いでいるんだとしたら、
「喋れん」なんて「倒してもらえんボーリング場のボーリングピン」とまったくもって同義、すなわち用無しだ。
強制早退、何ちゃらストップ、仕事場を這い出してまずはJPSを一箱手に入れる、
すなわち、肝心なのはハッタリを駆使して平常を気取り続ける事なんだと洒落込む。
あまりにも晴れ渡る午前の渋谷をふらつきながら、このまま帰って「寝込む」なんてキチガイにも似た行動に違いない、
向かうべきは美術館、喋る必要もなく唯一落ち着ける場所だと決め込む。
そんな中、坂道を歩いていたら懐かしのイカす映画館を発見、
「ドアーズ/まぼろしの世界」 11:15~
決まりだ、喋る必要もなく唯一落ち着ける場所とはどうやら「館」の字が付く場所なんだと洒落込む。
財布にお金はなく、銀行残高は1639、
そいつで辛うじてチケットを引換え、さぞかし大事そうに握り締めて特等席に沈み込む。
最高だ、美しい純粋心、はみ出し者、厄介者、臆病者、喜怒哀楽の探求者、愛して止まない。
以前、「素行の悪さは天下一品」などとヌカした友達にも似た上役の顔を思い出す、
トンだでっち上げだ、俺はハートビートに忠実に、単純明快に生きたいと願うだけの最後のあん畜生、
バットしかし、それが数え切れん人間達に迷惑を掛けているという事も存分にありうる話だ、
俺ってひょっとしてデリカシーの欠片もない単なる自己中心人物のファッキン代表格なのかも知れない、
すなわち、衝動と言動が抑え切れない有り様、そして何が何だかまるで分からない始末。
14:12、イカサマペテン師の如きモヒカン野郎からジリブルと電話が鳴る、
「ランチタイムのお時間です」
「なぁ、俺は喋れんのだ、仕事はとっくに抜け出した」
そして飽きもせずトランク屋忍び込み、ヤツにガリジャリ声(GJG)にて話しかける、
「もうちょい待っとけ、一緒にニューヨークへ行こうぜ」
いつか大阪の街で愛すべき男に問いかけた、
「なぁ、俺の声は今一体どうなってる?」
「かなりキテるね」
そして訳の分からん輩が中傷した、「語ってばかりのシャガレ何ちゃら」、
あの時にも似たガリジャリ声(GJG)にて日々を航海、
様々な出来事を思い出す昨今の胸中事情。