February 25, 2012
TOKYO HEADPHONE ’12
日々に追い付けず、どこに現実があるのかさえ定かでない今日この頃、
福山から東京に戻って来た俺に生粋のホットロッド野郎が叫んだ、
「おかえり!」
そうだ、こちとら東京とかいうハイカラ都市に11年以上、すなわち、もはや人生の3分の1を費やしているあん畜生。
渋谷も下北沢も鴬谷でさえどうやら射程範囲、
そして福山がようやく田舎である様な気がしてくる。
それでもあの町には頗るイカす連中が今も何人か暮らしている、
結婚し、家庭を持ち、太り、三交代で、或いは自営業で、マイカーでマイホーム、
まるで異次元の世界で各々が暮らしている。
俺は奴等を尊敬し、奴等は俺を羨ましがる、
俺はシンプルに「やりたい事をやる」を選んだ、
それしか生きた心地がしない、それしか出来ない、それ以外は気に入らないからだ。
そして同時に「やりたくない事は減らしたい」などと未だ強く願って止まない焦燥ヘベレケ野郎。
東京に戻る日の晩、以前作ったCDを手渡していた男が俺の家まで律儀にお金を届けにやって来た。
受け取るのを拒んだこちとらに男が云うには、
「これを受け取らんなら何しに東京行ったか分からんがな」
そして俺は800円をズタボロ財布に詰め込み、ついでに持って来てくれた大量のピンクムービーをトランクに忍ばせた。
11年以上前、上京する暁に奴等がくれたヘッドフォンをはめて俺は今も曲を作り、レコードを聴き、
そしてピンクムービーを観たりしている、
各々がイカす絶頂感を味わう為に日々さえ追い越して現実を手に入れる為に。