February 17, 2023
ロボットバイバイ '23
一昨年のよく晴れた夏の始まり、借り物のダサいバイクで走っていたら物陰に隠れていた白バイが突如現れサイレンを鳴らし出した。 路肩に停車し、何かと問えば「歩行者妨害」だという。
俺に思い当たる節はなく、事務的な口調で、さっきまでコソコソと物陰に隠れていたヤツが「市民の安全の為」ヅラで目の前に居る。
俺はどうにか紳士を気取ろうと冷静に正義ヅラに問うた、「そんなやり方でお金を稼いで楽しいのか?」「心が傷むでしょう?」
正義ヅラはピシャリ云った、「楽しくないですよ。仕事です。仕事ってそういうもんでしょう。上から云われた事をやるんです。貴方もそうでしょう?違うんですか?」
「違う」と心が云ったので、ピシャリ「違う」と答えた。同時に、コイツとまともに話をするのはチェコスロバキア人と仲良くなるよりも難解だろうと思った。
洗脳、教育、恐ろしい事だ。きっとロボットを演じきれるエゲツナイ訓練でもしているんだろう。
周りを歩く市民は俺を気狂いを見る目で眺め、バッタモンの正義を売りにしているその相手へは「ご苦労様です!」を目で送っていた。
条件は揃った。怒りの沸点は一気にレッドゾーンだ。
ヤツの主張は「横断歩道の前に人が居たのは気付きませんでしたか?」だった。俺は気付いていたが、渡る気がない事は目と目で確認していた。
俺は捲し立てた、「市民の安全を守る筈のヤツが物陰に隠れて恥ずかしくないのか?」
正義ヅラは恥じらいの欠片もなく云った、「そんなに叫んでもしょうがないじゃないですか?」
ヤツは自らの正義を信じて疑わないのだ。
罰金の記された紙を手渡され、俺は最後に云った、「この罰金がアンタの給料になるのか?」
ヤツは赤面するワケもなく云った、「それは違いますよ。市民の安全の為に使われます」。
次の日、警察署に電話をした。違反切符を切られたとは云わず、「こういうパターンって違反になったりするんですか?」という聞き方をした。
電話にはアルバイトみたいな女が出た。「時給800円でやってられるか」ってな声だった。即座に上の者に変わった。
小一時間、怒りに加え笑いさえ交えて話をした。「上の者」は巧いのか、まだ話が出来る「人間」だった。
次の日、俺は罰金を払ってしまった。実にクダラナイ話だ。
(919文字)
drecom_eroom5session at 03:50│Comments(0)│
│散文